トラウマのお話

何かしらのトラウマを抱えている人は結構いると思う


僕にもトラウマがある


それはマラソン、駅伝といった長距離走



僕は小学生の時から長距離走が得意で地元のマラソン大会に出ると、毎回トロフィーやメダルを貰っていたのでちょっと良い気になっていた


長距離走がトラウマになったのは、
3つのエピソードがあり…それが原因だ



1つめのエピソード

中1になり、野球部に入った
野球部は強制参加でそのマラソン大会に出なければならなかった

ゴール付近で2年生の先輩がいたが、僕は直前で追い抜いて、部で一番早くゴールした

「先輩に譲ってくれないのかよ〜」とその先輩は笑いながら言った

僕も笑いながらすみませんつい…と返したのだが

先輩は半分、本気で悔しがっていたように思う

まあ競技なんだから仕方ないじゃないか、と思う反面


先輩に譲るとかそんな発想が全く、自分に無かったことがショックだった


2つめ

中2で駅伝大会があった
うちの学校には陸上部は無いので、運動部から速い奴らが選ばれて、陸上の大会や駅伝に出ることになっている

僕のすぐ前を他校の背が高くて、かっこいい奴が走っていた

途中、沿道で女の子数人のグループが立っていた

その子達が、大声で声援を送ったのだ

突然だったので、僕は驚いてチラッと見た

お前じゃねーよwと笑われた
そう、当然だが僕の前の奴を応援していたのだ

これは思春期のピュアボーイには堪えた

俺じゃないって分かってるよ…そんなのと思った

結局、前の奴を追い抜けず終わった

別に女の子にモテたくてスポーツをやっているワケじゃなかったが、なんだか無性に虚しくなった

それまではほとんど考えなかった

一体何のためにマラソンや駅伝…こんな下らない事をやっているんだ?

と思い始めたのがキッカケで、野球部の練習もサボりがちになり、長距離走のトレーニングも適当になった

陸上の大会に出ても大して良い順位にならない

走ることやスポーツをやる事が、どうでも良くなり始めた


そして3つめ

中3になり、最後の陸上大会に出場した

というか出たくないのに『出場させられた』

一つ年下の野球部の後輩も長距離走に出ていた


後輩に負けるとカッコ悪いし、最後くらいは本気で走るかと思ったが

後輩が予想以上に速い…

だらけていたせいか追いつけない

最後の直線でなんとか並ぶ

「行ってください」と後輩が言った

これには驚いた 


アホな僕にもすぐに意味が理解出来た

僕を勝たせようとしているのだ

そんなの気にすんなと返したが



「いや、行ってください」と言う



最後の力を振り絞って、先にゴールした


なんて気遣いのできる良い奴なんだと思った

自分が情けなくて仕方なかった

帰りのバスでずっと呆然としていた



これら3つのエピソードが合わさり、三位一体となって、トラウマなのだ



それなりに頑張ってきたつもりで、得意気になっていた長距離走で、大した順位になれない上…

女の子にモテるイケメンに勝てない


それでやる気を失い、腐っていたら後輩に追い抜かれて、気を使わせてしまった

そしてそれは、過去の自分が先輩に対して、できなかった事


テレビで箱根駅伝だとか赤坂なんとかマラソンなんかをやっているのを見ると


「うわああああ!やめてくれ!思い出したくない!!」となるのだ


ああ…情けない…

名前は忘れたが有名なランナーが「あの電柱まで頑張ろう、次はあの電柱まで…」と思いながら走ったそうだ


ラソンはよく、人生に例えられるが

僕も長距離走は人生そのものに思える

何故、走るのか、走らされるのか

走るのをやめたらどうなるのか

未だにわからない